所報4月号
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11コラム地球温暖化と公害の違い-CO2を削減するための本当の方法-国際環境経済研究所副理事長 小 谷 勝 彦 1952年生まれ。東京大学法学部卒。コーネル大学でMBAを取得。74年新日本製鐵に入社。環境部長、中国総代表を経て、2009年から日鉄住金建材専務取締役に就任。併せて11年には国際環境経済研究所副理事長に就任。日本経済団体連合会温暖化対策WG主査や、経済産業省の産業構造審議会専門委員なども務めた。日本経済新聞の経済教室「地道な努力でCO2削減」(2004年6月29日号)などに執筆。小谷 勝彦 (こたに・かつひこ) 地球温暖化問題を公害問題と混同する人が少なくない。 温暖化問題を論じるテレビ番組には、工場の煙突からモクモクと煙が出る映像が流れることが多い(これはほとんどが水蒸気でCO2ではない)。 また、政府の審議会などでは、「工場の煙突に二酸化炭素(CO2)の検出装置を付けろ」という意見が出されたりもする。 1960年代の日本は公害に悩まされていた。今日、世界でも認められる素晴らしい環境になったのは、環境に対する国民の関心の高さと政府の環境政策、企業の技術開発と環境投資の結果である。 亜硫酸ガス(SOX)などの公害対策は、煙突から排出されるガスに含まれる有害物質を除去することで対応できるので、企業の取り組みが大切だった。 一方、地球温暖化の主たる要因とされるCO2は有害物質ではない。われわれ人間は、酸素を吸ってCO2を排出している。かつてCO2を吸収した植物が、長年にわたって地中に堆積してできたのが石油や石炭であり、これをエネルギーとして燃焼するとCO2が発生する。従って、温暖化問題の解決には煙突からの排出を規制する公害対策ではなく、エネルギー対策が必要なのである。 CO2発生量は、次の算定式を使ってエネルギーとの関係で表すことができる。 CO2発生量(t) =「エネルギー使用量(kcal)」×「CO2発生量(t)/エネルギー使用量(kcal)」 すなわち、CO2発生量は、「エネルギーの使用量」と「エネルギーを1kcal使用するときに発生するCO2」によって決まる。エネルギー資源のほとんどを輸入に頼っているわが国では、エネルギー統計から国レベルの発生量を計算することができ、そのため煙突に測定装置を付ける必要はない。 では、地球温暖化の対策として、われわれにできることは何だろうか。それは、「エネルギー使用量」の削減と、「CO2発生の少ないエネルギーの選択」になる。 「エネルギーの使用」を削減するためには、少ないエネルギーで効率的に経済活動や生活をすること、すなわち省エネルギーに努めることである。 日本の省エネレベルは、世界最高レベルにある。鉄1tつくるのに、中国では日本の1・2倍ものエネルギーを使う。われわれは、この最高水準の技術を活用して、企業レベル、個人レベルで省エネを推進することが大切である。 一方、「CO2発生の少ないエネルギーの選択」は燃料の選択であり、石炭よりは石油や天然ガスの方が1kcal当たりの発生量が少ない。CO2発生がほとんどゼロなのは、水力、風力、太陽光などの「再生可能エネルギー」と原子力である。 こうしたエネルギーの中から、われわれはそのコストや供給安定性なども考えながら、使用する燃料をバランスよく選ぶことが求められる。
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