所報5月号
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13コラム 倒産とは何か。最終的には「金詰まり現象」である。そこに至る理由はさまざまだが、中小企業の場合、経営者の金銭感覚に左右されるところ「大」である。見えっ張りや浪費癖など、いわゆる「お金を大切にしない」社長は、倒産予備軍と言っていい。私が常々「経営者はケチと思われるぐらいでちょうどいい」と言っているのも、そのことにほかならない。わが会員の中に素晴らしい「ケチ」が2人居るので紹介しよう。 その一人、Aさんは倒産後、4年で再起を果たし経営者に返り咲いた。が、そのとき彼の金銭感覚は大きく変わっていた。業績が順調なのに、彼のサイフの中にはいつも1000円しか入っていなかった。自分の浪費癖が倒産につながったことを反省したからである。 八起会は毎月例会を開く。会の後、仲間内で一杯となれば1000円では到底足りない。すると、彼は私に「会長、次の会のときに返しますからお金を貸してください」と言う。もちろんその金は返ってくるのだが、それが毎回のように続く。このケチぶりには、さすがに私もあきれた。が、あるとき彼がひょっこり事務所にやってきて「会長、これを八起会の運営に使ってください」と言って、ポンと10万円を寄付してくれた。彼は生きた金の使い方を知っていたのである。 もう一人、Bさんも再起組、1000円組である。倒産後、彼は金の管理をすべて奥さんに任せた。金銭感覚の欠如が倒産につながったことに気付いたからである。奥さんは毎朝、彼のサイフに千円札を1枚だけ入れる。それは社長に返り咲いてからも続いた。その彼が例会になるといつもニコニコ顔でやってくる。訳を聞けば「家内が八起会の会合のときだけ、サイフに一万円札を入れてくれて、『今日は仲間の皆さんと飲んでらっしゃい』と言ってくれるんですよ」と言う。これもただのケチではない。AさんもBさん夫婦も、共に素晴らしいケチである。 1930年東京生まれ。日本大学卒。55年に玩具メーカーを設立。急成長を遂げたものの、ドルショックと放漫経営がたたり77年に倒産。翌78年「倒産者の会」設立を呼び掛け「八起会」を起こす。「倒産110番(03―3835―9510)」を中心に、再起・整理・人生相談まで無料奉仕。著書に『修羅場の人間学』(東洋経済新報社)、『こんな社長が会社をつぶす!』(日本実業出版社)、『幸せをあきらめない』(致知出版社)、『家族の力』(祥伝社新書)など。野 口 誠 一(のぐち・せいいち)「社長は『ケチ』がいい」八起会 会 長 野 口 誠 一COLUMNコ ラ ム
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