所報2月号
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13コラム もっぱら「衣食足りて礼節を知る」というが、それだけでは人生あまりにももったいない。「経営の目的は還元なり」をモットーとする私にとっては、「礼節を知って奉仕へ赴く」とならなければ、とても充実した経営、充実した人生とは言い得ない。 誰しも自分の人生、自分の経営には全力を尽くす。しかし、それは人生の半面、経営の半面に過ぎない。世のため人のために何ができるか、すなわち人生の「裏」が輝かなければ、充実した人生とは言い難い。同様に、経営も規模や利益の拡大のみをもって評価するわけにはいかない。いかに社会へ貢献したか、還元したか、そこが問われねばならない。 こういうと、まず大抵の人は「余裕ができたら奉仕でも何でもしますよ」と言う。大抵の企業は「儲かったら貢献でも何でもしますよ」と言う。が、それでは順序があべこべであろう。その人の中に、あるいはその企業の中に、奉仕の精神が根付いていない限り、いくら余裕ができても、いくら儲かっても、おそらく社会還元をする日はあるまい。 一代で渋沢財閥を築いた渋沢栄一は、「余りあるを待って人を救わんとするは、ついに人を救う日なし」と言っている。余り(利益)がなければ社会に奉仕できないというのは、しょせん言い訳に過ぎない。 金儲けは難しいが、金づかいは簡単だと、誰もが思っているに違いない。が、本当は逆だ。金の使い方ほど難しいものはない。それによってその人の本質、その企業の体質が暴露されてしまうからである。よほど心しないと、金を使っているつもりが、いつしか金に使われていた、などということにもなりかねない。私が常々「経営者は生きた金の使い方を知り、倒産者は金に振り回される」と言っているのも、そのことにほかならない。 良寛さんに「裏を見せ表を見せて散るもみぢ」と、味わい深い句があるが、私たちもそういう「もみぢ」になりたいものである。「もみぢ経営」八起会 会 長 野 口 誠 一 1930年東京生まれ。日本大学卒。55年に玩具メーカーを設立。急成長を遂げたものの、ドルショックと放漫経営がたたり77年に倒産。翌78年「倒産者の会」設立を呼び掛け「八起会」を起こす。「倒産110番(03-3835-9510)」を中心に、再起・整理・人生相談まで無料奉仕。 著書に『修羅場の人間学』(東洋経済新報社)、『こんな社長が会社をつぶす!』(日本実業出版社)、『幸せをあきらめない』(致知出版社)、『家族の力』(祥伝社新書)、『不況だから倒産するのか?』(佼成出版社)など。野口 誠一(のぐち・せいいち)COLUMNコ ラ ム
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