所報4月号
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特集6特集 表題は、東洋経済新報社刊、マックス・H・ベイザーマンとマイケル・D・ワトキンス著の本のタイトルです。9.11や、エンロン破綻は、予見できた、防ぐことのできた危機であるという証拠が、いくつもあげられています。 また、それを防げなかった要因もいくつかあがっています。我々には、「危機に対処する際に、大きなコストがかかるが効果はずっと後になる」という場合にリスクを低くみる『楽観幻想』や「自分に都合の悪い現実は認めようとしない、自分に都合のよいように解釈する」という『自己中心性』があるというものです。 また、もう一つの大きな要因は、『特殊利益団体』の存在です。これは、自己の集団の利益が社会的費用の合計よりはるかに小さい場合でさえ、自己の利益を求める団体と定義されています。こういった団体は、「カミナリが同じ場所には二度と落ちないように、もうこんなことは起こらない」という理論で、危機の前はもちろん、危機の直後でも、しっかりした改革から徹底的に逃れようとします。 今回の福島第一原発の事故はどうでしょう。安全神話はどのようにして作られたのでしょうか。東電や政府機関に大きな責任があることはもちろんですが、我々も「知らなかった」「信じていた」で許されるのでしょうか。これからの対応についても、本質的な問題解決に取り組む必要があると思います。 もう一つ、財政破綻の問題はどうでしょう。解決の方法は、支出である社会保障や行政のムダを削り、収入である消費税等の引き上げしかないのですが、「日本国債は日本人が持っているから危機は起きない」という都合のいい解釈がされています。財政破綻がどんなに大変なことか、ほとんどの人が体験していないため、理解できません。そのため、改革により痛みを受ける人達の強い反発等々により、行き詰っているのが現実です。 政治の強いリーダーシップが期待されるのですが…。会頭白石省三(三浦工業株式会社 取締役会長)「安全神話」の正体と求められる対応とは危機回避を阻んだ2つの要因The winds of Matsuyama松山の私が考えるこれから『予測できた危機をなぜ防げなかったのか?~組織・リーダーが克服すべき3つの障壁~』ベイザーマン,M.H.著ワトキンス,M.D.著奥村 哲史 訳東洋経済新報社刊発行日:2011年11月17日価格:¥2,940(税込) 今号より、当所正副会頭が時代に「もの申す」コラムをスタートします。今、松山、日本、そして世界にはどんな「風」が吹いているのでしょうか?NEW第1回「予測できた危機をなぜ防げなかったのか?」第1回「予測できた危機をなぜ防げなかったのか?」

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