所報11月号
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坂本 光司/さかもと・こうじ1947年東京生まれ。福井県立大学教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2008年4月より法政大学大学院政策創造研究科(地域づくり大学院)教授、同静岡サテライトキャンパス長および同イノベーション・マネジメント研究科兼担教授。他に、国や県、市町、商工会議所などの審議会・委員会の委員を多数兼務している。専門は中小企業経営論・地域経済論・産業論。著書に『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)、『この会社はなぜ快進撃が続くのか』(かんき出版)など。法政大学大学院政策創造研究科 教授 坂本光司快進撃企業に学べ売場面積は260㎡(約80坪弱)しかない小さなスーパーだが、従業員は正社員が15人、ほかに2交代のパート・アルバイトが約40人の計55人、年商は約6億円にまで成長発展している。 さいちの特徴は多々あるが、代表的なのは、同店で販売している商品の大半が手づくりの自家製造商品ということと、総菜部門の販売比率が一般の食品スーパーと比較し、極めて高いことだ。ちなみに、さいちのおはぎを含む総菜部門の売上高比率は、一般の食品スーパーが10%前後に対し、なんと50%強を占めている。 総菜部門の中心は何といってもおはぎだ。「秋保おはぎ」の名称で売られているこのおはぎこそ、現専務が寝る間も惜しみ、何カ月も試作を続け、とうとうつくり上げた絶品なのだ。噂が噂を呼び、現在の1日の販売数量は平均で約5000個、土・日・祝日は1万個以上、お彼岸の時期に 宮城県仙台市の中心部から車で40分ほど走った秋保温泉入口に、小さな食品スーパーマーケットがある。この店こそ、日本で一番おはぎを売る店「さいち」だ。 創業は古く今からおよそ140年前だが、今日の業態になったのは、今から約40年前。その頃から、仙台駅周辺や郊外に、続々と大手のスーパーやショッピングセンターが立地・集積していった。このままではつぶれると危機意識を募らせた現社長の佐藤啓二さんと現専務の奥さんが、さまざまなセミナーや評価の高い食品スーパーなどを視察する中、業態改革や他店との差別化経営にチャレンジしていったのだ。 努力と苦労が実り、現在、は、何と2万個以上が売れるという。しかも、こういう状態が既に20年以上も続いているのだ。 昔ながらの田舎のおはぎだが、驚かされるのはあんこの量で、正直、半端ではない。もとよりその味は抜群だ。気になる値段はというと1個105円、しかも既に10年以上、値段が上がっていない。その理由は、どんなに原材料価格が上がっても、不景気で地元のお客さまの収入が増えないうちは値上げしないというのが、さいちの鉄則だからだ。また、商品には化学調味料や添加物を一切使用していないため、おはぎの賞味期限は当日限りとなっている。 佐藤さんは、「私は秋保のまちで生まれて、この土地の人に育てられ、土地の皆さんに支えられながら、この土地で商売をしてきました。口コミでさいちの評判を外に広げてくださったのは地元の方々です。だから、これからも商売を通じて、地域の人にご恩返しをし続けたい」と言う。そこには規模を拡大したり、より業績を高めたいといった考えは毛頭ない。この経営姿勢こそが、さいちの快進撃の秘訣(ひけつ)なのだ。 地域の人への恩返しを続ける『さいち』vol.08コラムコラム16

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