所報3月号
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㈱ジョイ・アートは、ビージョイグループと秋田県のわらび座が共同出資した、東温市にある「坊っちゃん劇場」を運営する会社です。自主制作の作品を1年間演じる、日本で唯一の劇場です。当初、同劇場の場所にはシネマコンプレックスを設置する予定でした。その計画が頓挫した際に、わらび座の小島社長とご縁があり、劇場建設の構想がスタートしました。 しかし、設立前の試算では、初期投資は相当な金額となり、また、利益の見通しもたたないため、ビージョイグループの役員会では決議すら出来ない状況でした。行政や文化人の方からも、構想は素晴らしいが民間で運営するのは難しいのではないかと指摘されました。それでも、ビージョイグループオーナーの利益追求ではなく、地域に恩返しをしたいという思いから、全国にも例のない、地域に根差し、四国・瀬戸内をテーマとしたミュージカルを提供する舞台運営が始まりました。 行政の皆様や教育・文化界、また経済界という幅広い方々の支援をいただき、初年度の作品である 「誓いのコイン」は、松山城二之丸の井戸跡から発見されたロシアのコインに、ロシア人将校と日本人看護師の名前が刻まれていたことに発想を得たストーリーです。ロシア連邦ミハイル・ベールィ特命全権駐日大使や露日青年訪日団団長のオレンブルグ国立大学日本情報センター長、リュドミーラ・ドカシェンコ氏が観劇され、その内容を高く評価していただいたことから、ロシア公演につながりました。後でわかったことですが、脚本をお願いした高橋知伽江先生が、東京外国語大学のロシア科を卒業され、ロシア文学に造詣が深かったことも作品が支持された要因だと思います。 偶然と奇跡の中で、日本の地方にある劇団が、舞台芸術では世界最高峰と言われるロシアで公演するという大きな試みが実現しました。目の肥えたロシアの方々に、私たちの舞台が通用するのか、不安の中で準備が進みました。現地では言葉の通じないスタッフとのやり取り、予定と違う機材での演出など、多くのハードルを全員で乗り越えました。当初は、座席に深く腰掛けていたロシアの方々が、時間が経つにつれ、身を乗り出し、涙を流されました。最後にブラボーコールをいただいた時には、「心」を伝える芸術の素晴らしさにあらためて感動しました。舞台途中で涙した役者もいたほどです。 日本の劇団がロシア政府から招かれたのは初めてとのことで、新しい日本の歴史の1ページになるとバックアップしてくれた外務省の方々、応援団として、準備を支え、資金協力もいただき、ロシアへ観劇にも来ていただいた、地域の皆様にあらためてお礼申しあげます。「坊っちゃん!」は目標の6万人を上回る方々に足を運んでいただきました。6作目となった前作の「誓いのコイン」は約8万人の観客動員数となり、現在公演中の「幕末ガール」は前作を上回る推移となっています。今後は、安定した劇場運営ができる、年間10万人を目指します。「世界から地方への流れを つくる芸術拠点へ」~日本で唯一の劇場が新しい地域文化の発信方法を提案~(株)ジョイ・アート 代表取締役 越智 陽一 氏―ジョイ・アートについて教えてください。自主制作の作品を1年間演じる日本で唯一の劇場―「誓いのコイン」はその芸術性の高さからロシア公演を行いました。ロシア公演は新しい日露の歴史の1ページに―子どもたちの舞台芸術実体験にも力を入れていますね。地域全体で子どもたちの成長と芸術を支えるシステム 舞台芸術を通して、未来の愛媛この人に聞くこの人に聞く2
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