所報8月号
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当所では、地域産業の活性化を目的に、会員企業と大学の連携を推進しています。 愛媛大学社会連携推進機構の協力のもと、毎月、愛媛大学発のホットな情報を提供します。 ぜひ、ご一読ください!産学連携で地域経済をパワーアップ!第13回第13回 地域産業の明日を照らすCFRPとは 様々な分野で今後の活用が見込まれる炭素繊維。愛媛には、炭素繊維に関する国内最大規模の製造工場があることから、産官学が連携して、地域産業で活用するための研究・開発が進められています。今号は、地域経済の活性化へ大きな可能性を秘めている炭素繊維について、その伝道師を自認する愛媛大学の黄木先生にお話をお伺いしました。愛媛大学 教授 博士(工学)黄木 景二 氏 │炭素繊維、CFRPについて教えてください。~炭素繊維の伝道師 愛媛大学 黄木研究室より~ 炭素繊維とは、簡単に言えば、ダイヤモンドのように炭素原子どうしが強く結合した繊維です。そして、炭素繊維で強化したプラスチックがCFRP( )です。 最近では、CFRPがボーイング787で利用されたことから、注目を集めています。新しい素材・・・というイメージがあると思いますが、実際は40年以上前からスポーツ用品をはじめ、航空機などへ利用されています。私自身も、23年間、炭素繊維の研究に携わっています。 今後は、軽量化が求められる自動車、また、風力発電のブレード、家電や携帯電話などの筐体、さらには、医療・介護関係などへの利用が見込まれており、日本の重要な戦略物資にもなっています。Carbon Fiber Reinforced Plastics│炭素繊維と地域産業の関わりについて・・・│愛媛における炭素繊維産業の可能性とは・・・ CFRPの成形加工は、それ自体が研究対象になっており、ハードルが低いものではありません。技術を確立するためには、素材メーカーや研究機関の協力が不可欠ですが、愛媛には炭素繊維の製造工場があり、また、産官学の連携による研究・開発の体制も整っています。技術レベルの高い成形加工企業も多く、長いスパンで取り組めば、愛媛・四国にCFRPの成形加工の産業集積をつくることも可能です。地域の企業は、短期的なスパンで成功事例をつくって利益を確保する一方、10年程度の期間を見据え、技術の蓄積につながる研究・開発を進める必要があります。愛媛大学は、産学官の連携を通して、その取組みを支えることで、地域に貢献していきたいと考えています。 グローバルな観点からも、炭素繊維という素材は、日本のメーカーが他の追随を許さない高い技術をもっています。 しかし、炭素繊維と樹脂を固めてCFRPをつくったり、加工したりする技術は、ヨーロッパと比べて10年から20年遅れていると言われることがあります。現状、素材を日本から輸出して、海外で成形加工を行い、逆輸入したもので製品がつくられています。 この一因として、日本のものづくり産業の構造は、川上の素材メーカーと川下の製品産業には大企業が多いものの、川中となる成形加工に関しては中小企業が多く、資金面などから、技術開発が進んでいないことがあげられます。 しかし、それらの企業の技術レベルが低いわけではありません。長年蓄積された職人の技により、金属の成形加工などでは高い技術を有しています。CFRPに関しては、航空機のように、時間をかけて、ゆっくり、精密に加工する技術は確立されていますが、自動車や家電で利講師として愛媛に赴任してから14年目を迎える黄木教授。趣味はドライブをはじめ、源氏物語などの古典を読むことや全国の天満宮巡りなど幅広い。また、天文学を好み、大学では炭素繊維を通して宇宙の研究にも携わっている。座右の銘は「守一隅 照千里」。自分の持ち場を守ることが、千里を照らすことになるという意味だとか。今後、先生の研究が地域を照らすことになるのでは。用するような、スピードが求められる成形加工の技術は未成熟です。また、リサイクルが可能で、冷えると固まる熱可塑性樹脂を使用したCFRPへの移行が進み、大きな過渡期を迎えています。 安価で短時間に大量生産する成形加工技術は地域の中小企業が得意とする分野であり、それをCFRPの分野で確立できれば、ニーズも見込めることから、地域全体の活性化が期待できます。コラム13

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