所報9月号
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坂本 光司/さかもと・こうじ1947年東京生まれ。福井県立大学教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2008年4月より法政大学大学院政策創造研究科(地域づくり大学院)教授、同静岡サテライトキャンパス長および同イノベーション・マネジメント研究科兼担教授。他に、国や県、市町、商工会議所などの審議会・委員会の委員を多数兼務している。専門は中小企業経営論・地域経済論・産業論。著書に『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)、『この会社はなぜ快進撃が続くのか』(かんき出版)など。法政大学大学院政策創造研究科 教授 坂本光司快進撃企業に学べ業・企画営業職)、問屋を通さず製販一体型経営、販売先は17万3000社、技術力・企画力・販売力・人財力・ネットワーク力などを重視する「価値ある企業に共通する経営学」が、同社においても愚直一途に実践されていることがよく分かった。これらの中で、筆者が最も印象深かったのは、同社の社員重視経営の徹底である。 例えば、3800人の社員の正社員比率を聞くと、なんとその99%という。しかも残り1%の非正規社員は、社員の希望で非正規雇用にしているという。筆者はこれまで約7000社を超す企業を訪問調査してきたが、社員数3000人以上の企業で正社員比率が実質100%の企業は見たことがない。 次に保有株式割合を聞くと、第1位は社員持ち株会、その持ち分は50%、しかもほぼ全社員が株主という。さらには2年前の創業40周年記念イベントでは、全社員で2泊3日の旅行に行き、その費用の全てを会社が負担したそうだ。 最後に本社の隅から隅まで見学させていただいた折、社員食堂やトイレも見せてもらった。というのは、これら施設の 愛媛県今治市に「日本食研」という社名のユニークな企業がある。創業は1971年、現在の主事業は、ブレンド調味料や加工食品の研究開発と販売である。より驚かされるのはこの間の成長発展ぶりで、事実、創業当時わずか数人であった社員数は、現在ではグループ企業を含め約3800人、売上高も830億円である。しかも売上高は2002年に発生した狂牛病事件の年を除き、実に41年間増収を続けている。 先日、その理由を知りたく、四国経済産業局のスタッフらと、今治の愛媛本社を訪問してきた。まるで公園の中にそびえる本社ビル、さらにはまさに宮殿そのものである「KO宮殿工場」などを見せていただくとともに、大沢哲也社長たちスタッフの方々から話を聞いた。 年間新商品開発件数が1800アイテム、全社員の約50%が営業職(提案営状況を見れば、いくらトップが「社員重視経営をしている」と声高に言ったとしても、それが本当に行われているか否かはすぐ分かるからである。 ちなみに、同社の社員食堂は本社ビルの1階にあったが、その光景はまるで高級レストランのようであった。こうした社員思いの経営が上場したらより充実できるとは到底思えない。社員のために上場をしない会社『日本食研』vol.16コラムコラム16
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