所報2月号
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会頭森田 浩治株式会社伊予銀行 会長 『不易流行』、激動の時代を生きるうえでの考え方として、私が大切にしている言葉です。元々は松尾芭蕉が俳諧について説く際に用いた考え方で、「俳諧は永遠に変わらないもの(『不易』)と、時に応じて変化するもの(『流行』)との両面に立脚しており、変化し続けていくことが俳諧の不変の価値を実現することから、根源的には『不易』と『流行』は一体である」と説いたそうです。 つまり『不易』とは、どんなに世の中が変わっても絶対に変えてはいけないもので、『流行』とは、『不易』を守るために外部環境の変化に積極果敢に挑戦し変えていくもの、そしてそれらをうまく循環させることが、「不易」と「流行」「企業経営の 原点と革新」売道徳や、食品の安全安心の確保といった企業経営の原点ともいうべきことが守られなかったために生じた問題といえます。一方、少子高齢化・人口減少などの社会構造の変化は確実に進行しており、新たな価値観やマーケット、ICTやグローバル化への対応が求められています。これらはまさに『流行』といえるでしょう。変えるべきものそうでないもの、絶え間ない経営革新が求められる時代だからこそ、忘れてはならない重要な視点ではないでしょうか。 今年は六十干支で『甲午』。旧来のしきたりや陋習を打ち破る革新的な動きが出てくる年といわれています。私自身も、当会議所の運営に携わる立場として、『不易流行』について今一度考えてみたいと思います。持続的な発展へとつながる真理であると解釈できます。 昨年、旅館を東京で営む経営者のお話を伺う機会がありました。昭和24年創業の和室が12部屋という家族経営の小さな旅館です。昭和45年頃から宿泊者の減少が続き、昭和50年代に平均客室稼働率が60%台まで下がり存続が危ぶまれたのを機に、外国人の積極的な受け入れを始めました。文化や習慣の違いから苦労されたようですが、地域の祭りやイベントの情報提供、それらに参加し日本らしさに触れられる環境整備など、地域で〝おもてなし〞する体制を整えたそうです。当の旅館も和室や風呂場が日本らしさとして受けとめられ、今や客室稼働率は90%前後、外国人比率も90%前後となったそうです。この旅館や地域にとり、『不易』とは日本らしさ、『流行』とはターゲットとするお客さまだったのでしょう。 こうした『不易流行』の考え方は、かつてない変化と競争の時代を迎えた今こそ、一層大切ではないかと思います。 昨年来、食品の誤表示(偽装)や冷凍食品への農薬混入の問題が明るみになっています。これらは本来『不易』であるべき商「変えるべきもの そうでないもの」第1回きのえうまろうしゅう    ・・・・・・・・・・・・・・コラム4

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