所報11月号
18/28
坂本 光司/さかもと・こうじ1947年生まれ。福井県立大学教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2008年4月より法政大学大学院政策創造研究科(地域づくり大学院)教授、同静岡サテライトキャンパス長および同イノベーション・マネジメント研究科兼担教授。他に、国や県、市町、商工会議所などの審議会・委員会の委員を多数兼務している。専門は中小企業経営論・地域経済論・産業論。著書に『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)、『この会社はなぜ快進撃が続くのか』(かんき出版)など。法政大学大学院政策創造研究科 教授 坂本光司快進撃企業に学べかけは、たまたま知り合いの葬儀に参列した帰り、駅のゴミ箱に参加した葬儀の「会葬礼状」が何枚か捨てられている光景を目の当たりにしたからだという。この様子を見て、当時広告代理店に勤務していた五十嵐さんはがくぜんとするとともに、捨てられない「会葬礼状」をつくりたいと思い立ったそうだ。 その後、故郷の鹿児島に帰り、1年間の市場調査を実施後、創業している。今や、全国一の「オリジナル会葬礼状」作成企業となったが、最初から順調だったわけではない。というのも、創業当時は、葬儀屋さんはもとより、喪主やその家族の間でも、追加費用を掛けてもほとんどの人が読まない「会葬礼状」は重視されていなかったのである。 それでも五十嵐さんは諦めずに全国各地の300カ所ほどの葬儀関連業者を営業に回った。その結果、1社が多大な関心を寄せてくれた。その1社とは、葬儀業界ではあまりに有名な宮城県仙台市に本社を持つ「清月記」である。同社の菅原裕典代表取締役は、五十嵐さんが持参した「オリジナル会葬礼状」のサンプルを数枚読んだ後、「これはいい。これだ」とすぐに採用を約束したという。 菅原さんは業界の革命児といわれる人物で、喪主や施主のためにならない、しきたりを創造的に破 鹿児島中央駅近くの商業ビルに「マコセエージェンシー」という会社がある。社員数は約110人、主事業は「オリジナル会葬礼状」の製作だ。 「オリジナル会葬礼状」の製作といっても、わかりにくい読者もいるかと思うので、少し説明する。葬儀に参列すると、清め塩やハンカチなどとセットで礼状をいただくことが多い。この礼状の文面が一般的なものではなく、他にはないオリジナルなものなのだ。どのようなものなのかというと、同社は、まず遺族に故人の人となりや、思い出を電話取材する。これを元にプロのライターが会葬礼状に使う文章を作成していくのだという。 かつては、全国どこの葬儀に出ても、会葬礼状の文面はだいたい同じであった。同社こそ、この分野の草分け的な存在であると言えるだろう。同社の創業は今から26年前の昭和63年。現社長の五十嵐芳明さんが、この事業を始めたきっ壊するとともに、喪主や施主が喜ぶことなら何でもするということをモットーとしている。その結果、今や業界では目標といわれている企業にまで成長発展している。菅原さんと五十嵐さんの出会いはお互いにとって非常に良いものであったと言えるだろう。オリジナル会葬礼状で躍進『マコセエージェンシー』vol.28コラムコラム16
元のページ