所報9月号
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坂本 光司/さかもと・こうじ1947年生まれ。福井県立大学教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2008年4月より法政大学大学院政策創造研究科(地域づくり大学院)教授、同静岡サテライトキャンパス長および同イノベーション・マネジメント研究科兼担教授。ほかに、国や県、市町、商工会議所などの審議会・委員会の委員を多数兼務している。専門は中小企業経営論・地域経済論・産業論。著書に『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)、『この会社はなぜ快進撃が続くのか』(かんき出版)など。法政大学大学院政策創造研究科 教授 坂本光司快進撃企業に学べ性の不足と高い離職率は外部の問題ではなく、自社が若者や女性にとって、働く場所としての魅力を持っていないということ。もう一つは、なぜ体中にノウハウが詰まった、働きたいと思っている高齢者を、定年だからという理由だけで離職させてしまっているのかということである。 二人は全社員と議論を重ねた。そして、若者や女性、さらには高齢者が働きやすい・働きたくなる職場づくりを、できるものから順に実行していく。その結果として、新設・改善された福利厚生制度は20種類以上になっている。その一部を紹介すると、「子どもの看護休暇(30分単位、有給休暇とは別)」「本人または配偶者の出産祝い金(10万円)」「(認可・無認可を問わず)保育料の3分の1を補助」「育児や看護のための始業・終業時間の繰り上げ・繰り下げ」「家族の介護サービス利用費用を3分の1補助」「70歳までの継続雇用制度」「リラクゼーションルームと機器の整備」「技能士など、国家資格の取得経費を補助」「講演会・セミナーなどへの参加を奨励」などだ。 こうして、かつては30%以上あった離職率が現在では実質ゼロにまで改善、従業員が定着するようなり、 島根県松江市に株式会社長岡塗装店という建物や塀などへの塗装を専門とする中小企業がある。塗装業界は一般的に3Kとか5K職場などと呼ばれ、若者や女性に敬遠されている。さらには、高い離職率、従業員の高齢化、その結果としての、従業員のモチベーションの低下に悩んでいる企業が多い。この業界にあって、長岡塗装店は、見事にこうした問題をことごとくクリア。成長発展している企業である。 今から20年ほど前までは、他の会社と同じような多くの問題を抱えた、ごくごく普通の会社だった。しかしながら、事業承継した娘夫婦(娘婿が社長)は、「このままではじり貧となり、やがてつぶれてしまう…」と危機意識を持ち、経営改革に取り組んでいった。 二人が強く問題意識を持ったことは、次の二つだ。一つ目は、若者や女従業員数も倍増。このほか、女性社員の比率は14%から50%に、子どもがいる社員もゼロから3分の1に、さらに国家資格の取得数も大幅に増加している。こうして見ると、企業の本質は業種や規模ではなく、人財、とりわけ経営の考え方・進め方に本質があるということが分かる。職場改革で、変貌を遂げた『長岡塗装店』vol.36コラムコラム16

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