所報2月号
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坂本 光司/さかもと・こうじ1947年生まれ。福井県立大学教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2008年4月より法政大学大学院政策創造研究科(地域づくり大学院)教授、同静岡サテライトキャンパス長および同イノベーション・マネジメント研究科兼担教授。ほかに、国や県、市町、商工会議所などの審議会・委員会の委員を多数兼務している。専門は中小企業経営論・地域経済論・産業論。著書に『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)、『この会社はなぜ快進撃が続くのか』(かんき出版)など。法政大学大学院政策創造研究科 教授 坂本光司快進撃企業に学べパートナーとの出会いがあったからだという。 退職後、およそ1年間にわたり化粧品に関して徹底的に勉強するとともにオリジナル化粧品づくりも研究、その後、創業している。ブランド名はmaNara(マナラ)。その主力商品の「ホットクレンジングゲル」という商品は、わずか10年でなんと500万本を販売。業績も年々高まり、売上高も5年前の30億円が、今や75億円である。 同社の成長発展の要因は多々あるが、ここでは、2点にのみ絞って紹介する。 第1点は、安全・安心な化粧品づくりへの熱い思いだ。岩崎社長は自身の肌荒れ体験を踏まえ、とりわけ肌に優しい安全・安心な「7つの無添加化粧品」の開発にこだわった。7つの無添加とは、「着色料」「合成香料」「鉱物油」「石油系界面活性剤」「エタノール」「パラベン」、そして「紫外線吸収剤」を使用していないということだ。 こうした7つの無添加化粧品の開発のため、およそ1年間、良きパートナーや研究者などと研究開発を重ね、満を持してスタートしたのだ。岩崎社長は、15年間の広告代理店勤務時に、通信販売型の化粧品メーカー担当であったということも幸いした。業界の実態について非常に詳しかったのである。 もう一つは、女性社員が真に働きやすい職場であることだ。岩崎社長は、これまた自身の生活体験を踏まえ、社員、とりわけ子育て中の女性社員が真 東京・銀座に、ランクアップという社名の化粧品メーカーがある。社員数は43人ながら、前期の売上高はなんと75億円、その経常利益額は8.5億円だ。売上高対経常利益率は11%、経常利益額を社員数で割った「利益生産性」は、なんと2000万円という超高業績企業である。 創業は、今から11年前の2005(平成17)年。創業者は現社長である岩崎裕美子氏だ。岩崎社長は、もともとは広告代理店に勤務していた。多くの通信販売型化粧品メーカーの担当として活躍していたものの、退職。ランクアップを創業している。 創業のきっかけは、三つあるそうだ。 一つ目は、15年間に及ぶ長時間労働による不規則な生活で、肌がボロボロになり、30代なのにある日40代と間違えられたこと。二つ目は、真に肌に優しい理想の化粧品づくりを業界に提案しても大半のメーカーは、ロットや価格ばかりを重視して、自分の出した企画提案に耳を貸してもらえなかったこと。そして三つ目は、理想の化粧品づくりに共感・共鳴してくれる良いに働きやすい就業環境に注力してきた。こうした思いが社員の共感を生んだだけでなく、優秀な女性の採用にも大きく寄与した。例えば「病後児保育サービス」「年間5日間の子ども介護休暇」「時間休暇」「時短勤務」「毎年5日間のリフレッシュ休暇」「30分早く帰っていいよ制度」など枚挙にいとまがない。商品力と人財力、そしてマーケティング力の重要性をあらためて教えてくれるいい企業である。女性が働きやすい化粧品メーカー『ランクアップ』vol.40コラムコラム16
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