表紙絵にまつわる伝説を、地域のレジェンドとともに巡る本コラム。今回は、伊予市尾崎の五色浜です。 五色浜は、平氏のお姫様にまつわる悲しい伝説が残されています。伊予国で勢力を持っていた高市氏が、平氏と強いつながりを持っていたことから、高市盛義が元服する際、平清盛が親代わりに儀式を取り計らい、二人は親子と変わらぬ関係を築いたとのことです。このため、高市氏を頼って五人のお姫様が伊予国へと流れ着きました。ある日、「五色姫復活譚」です。この伝一番上の姉姫が赤蟹を見て、「赤は平氏の赤だ。憎き源氏の白蟹に仕返しをしてやるから探してきなさい」と妹姫たちに指示を出しました。白蟹が見つかるはずもなく、怒った姉姫は、一番末の妹姫を刺し殺してしまいます。姉姫を恐れた妹姫たちは自ら海へ身を投げ、姉姫も後を追うように海へと沈んだそうです。その後、浜辺には赤、白、緑、黄、黒の小石が打ち寄せるようになり、その浜を五色浜と呼ぶようになりました。浜辺にある五色浜神社には、五人の姫の霊を鎮める社が祀られています。 伊予市商業協同組合の安田氏によると、伝説は新たな形で語り継がれています。これが、人々の祈りによって五人の姫が海から蘇るというえをもとに、毎年3月、女性が主役の「五色姫復活祭」を行っており、多くの人が訪れます。安田氏は、「これからも伝説を語り継ぎながら、人が集まる場所として守り続けたい」と話されました。【夕映の 五色が濵を かすみけり】 五色浜の夕陽を正岡子規が詠んだ句です。悲しい伝説が寂寞の夕陽に溶け込む様子が思い浮かばれます。一年間、伝説をレジェンドとともに巡りましたが、多くは悲しい話を、人が語り、伝えて、情景とともに今につないでいます。伝説は、受け止めるそれぞれの人の心を導いているようでした。ぜひ、表紙絵でご紹介した場所を訪れ、伝説に触れてみてください。悲しいお姫様の伝説を夕陽が今に伝える第11回19コラム「伊予市尾崎『五色浜』」
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