私たちは、コロナ禍で何を学んだのでしょうか?未曾有のパンデミックにより観光関連産業は大打撃を受け、物価高、資源高、ゼロゼロ融資後の返済不安や労働力不足など、多くの問題を抱えたままです。一方、光は確実に見えてきており、道後温泉の2022年度宿泊客数は平常期2019年度比の104%と全国でも珍しいⅤ字回復を遂げることができました。これは、全国旅行支援など各種施策のお陰もありますが、これまで約30年間にわたり住民も誇りが持てるよう、歴史漂う景観まちづくりを地道に進め、道路や飛鳥乃湯泉整備など官民協働で取り組んできた成果です。加えて、建物の耐震義務化という6年前からの〝第一の危機〞に直面し、旅館ホテル群が約90億円余りの建て替え等の投資に挑戦するなど、「伝統は革新の積み重ね」の道後のDNAのもと、まさにピンチをチャンスに変えた経験を活かせたのかもしれません。しかし、真価が問われるのはこれからです。社会全体が劇的に変化したのに伴い、ツーリズムも環境に適応した進化を遂げない限り、生き延びることは困難です。旅をする意義、「そこに何があるかではなく、そこで何ができるのか、どう過ごせるのか」という新しい価値提供とともに、従事する者の労働に対する意識変容への対応、そして、顕在化したデジタル化への遅れや業界の生産性の低さの克服が急務です。このため、自身の商品力強化、高付加価値化を目指すとともに、お客様の実感価値の向上に繋がる地域を挙げたホスピタリティマネジメントを推進し、地域が来訪者を創造する新しい観光まちづくりに挑戦していきたいと思います。観光は人々の心を癒し人生を豊かにし、交流人口創出により地域の雇用や経済、暮らしを支える裾野の広い産業で、まさに、「あとから来る者のために」持続可能な仕組みづくりを進めることが重要です。コロナ禍を総括し、行政は地域経営の視点から将来につながる基盤整備を行い、私たち事業者は、原点である「いい店(宿)づくり」をすることにより、「いい街づくり」へと発展させることができます。グローバル化も見据え、行きたくなる店、泊まりたくなる宿、訪れたくなる街、ストレスなく移動できる街、住みたくなる街づくりのために共に汗を流していきましょう。7コラム松山商工会議所副会頭チェンジ―持続可能なまちづくりをーリレーコラム宮﨑 光彦第3回「伝統は革新の積み重ね」大変革の時代に チャンスを掴む
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