所報8月号
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コロナ禍の3年間、海外旅行や出張を控えていた方も漸く再開されていると思います。私も先日米国へ出張しましたが、宿泊代や食事代の高さに驚きました。皆さんも同様の経験をされていませんか。では、何故そう感じるのでしょうか。この数年で進んだ円安もそうですが、最大の要因は円の実質実効為替レートつまり円の購買力(円の対外的な実力)が下がっているからです。1995年をピークに実質実効為替レートは約6割下がり、現在の1ドル140円前後の水準は、50年前の固定相場360円から変動相場に変わる水準と等しいとも言われています。実質実効為替レートの趨勢は、戦後から続いた円高局面から1995年前後を境に円安局面に転換しています。この原因は日本のファンダメンタルズの変化にあると思います。戦後高度成長期を経てバブル経済崩壊直後の90年代前半までは、物価上昇と賃上げによる好循環が続いていましたが、以降はデフレとベースアップを伴わない賃金構造が定着化してしまいました。日本の物価や賃金が変わらず、海外が年平均2%上昇したと仮定すると30年間で物価も賃金も約80%上昇し、その分だけ円での購買力が低下したことになります。米国の平均時給をこの10年間で比較しても、24ドルから34ドルへと年3.5%換算の約42%上昇しています。日本国内だけで考えると、給料が上がらなくても物価も上がらないので支障が無いように感じられますが、最近の物価上昇は流石に日常生活に影響が出ています。今年は国内の大企業では平均で3%台後半の賃上げが実施され、愛媛県内においても8割を超える企業が賃上げを行っています。物価と賃金上昇の好循環が来年以降も続くかどうか、今まさにターニングポイントにあります。これまで雇用延長や女性の労働参加率上昇により、企業は労働力を確保できていましたが、これからは労働力が絶対的に不足してきます。従って人手不足を補うための設備投資等をいかに積極的に行うか、また人件費も将来を見据えた人的資本への投資として捉えていけるかが鍵になると考えます。松山商工会議所副会頭コラム6チェンジリレーコラム三好 賢治第4回「物価と賃金上昇の好循環を持続可能とするために」大変革の時代に   チャンスを掴む

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