魂く響に小さなチョウが息絶えていた。翔子はそのチョウにお経を唱えていた。どんな微小なものにも翔子は尊い命を見るのだ。 先日、雑貨店をいくつか経営する友人に「最近の若い人はどこにお金を使っているんでしょう?」と聞かれたので、いろいろと調べてみました。日々20歳前後の若者と接している大学教員の友人は、「とにかく節約志向が強い」と話していました。SMBCコンシューマーファイナンスが今年1月に発表した「20代の金銭感覚についての意識調査2024」を見ると、金銭感覚を通じた若者の価値観や人生観が垣間見えます。 そんな中で、私が特に興味を持ったのは、結婚や出産・子育て、持ち家と収入の関係でした。これまで、過去のさまざまな調査から結婚や出産・子育てを妨げている要因は「お金がないこと」だと認識していました。しかし今回の調査で、結婚について「年収がどんなに多くても、したいと思えない」と答えた人が21.8%もいました。出産・子育てについて同様に答えた人は24.3%で、ともに約1年前の前回調査に比べ4ポイント以上と大きく増加傾向にあります。 この二つの設問に共通するのは、単純に収入が多ければする、少なければしないという傾向ではないことです。年収の少ない方から「500万円あれば」の選択肢までは年収が増えるにつれて「したい」という人が増えますが、それ以上になると結婚や出産・子育てをしたい人の割合は必ずしも増えません。また、年収がどんなに少なくても結婚したいと考える人は14.5%います。同様に出産・子育てについては8.7%で、前回調査に比べ減少傾向です。 住宅についても、「年収500万円あれば」が購入意向として多く、年収がいくら多くても購入したくないと回答した人が2割以上います。20代にとって人生の大きなイベントや高額の買い物の実現意向が、年収の多少とあまり関係なく、「したい人は年収が少なくてもしたい」「したくない人は年収が多くてもしたくない」と読み取れます。また、家庭や家といったものに対する価値観は収入の低い人ほど憧れがあり、年収がある程度以上の人はむしろ足かせに感じる傾向があるといえるかもしれません。 一方、同じ調査で「人生を楽しむために一番大切にしたいと思うもの」という設問に対して全体で「家族」が12.2%で1位、以下「趣味」(11.0%)や「恋人・パートナー」(10.1%)と続きます。近しい人との関係を大切にしていることがうかがえます。先の傾向と合わせると、その上で、あまり形にはこだわらないということになるでしょうか。 この調査全体を通じて強く感じるのは、若い世代の将来への不安と強い節約志向です。「老後が不安」と感じる人は「外食を控える」は約3割、交通費を節約する人も約3割います。 20代はこの先10年、20年と消費の中心を担う世代です。若いころに感じたお金への苦労と不安とともに生きていきます。商品やサービスを企画・提供する人は、自分の世代との感覚のギャップを常に意識する必要がありそうです。経営コラムトレンド通信No.16「20代の価値観や節約志向を理解しよう」上席研究員渡辺 和博わたなべかずひろ コラム1873.5%とほぼ4人に3人。節約のために書道家金澤 翔子かなざわ・しょうこ 日経BP総合研究所 上席研究員。1986年筑波大学大学院理工学研究科修士課程修了。同年日本経済新聞社入社。IT分野、経営分野、コンシューマ分野の専門誌編集部を経て現職。全国の自治体・商工会議所などで地域活性化や名産品開発のコンサルティング、講演を実施。消費者起点をテーマにヒット商品育成を支援している。著書に『地方発ヒットを生む 逆算発想のものづくり』(日経BP社)。5歳のときに書家である母・泰子に師事し書を始めた。世界的に活躍する日本を代表する書家の一人。ダウン症の書家としても広く知られており、国内の神社仏閣や美術館のほか、ニューヨークやロンドンをはじめとする世界各地で個展や公演を開催している。バチカン市国に大作『祈』の寄贈、NHK大河ドラマ『平清盛』の題字、東京オリンピック公式アートポスターの制作、上皇御製(天皇御在位中)の謹書を担当。2013年には紺綬褒章を受章した。■公式ホームページ https://k-shoko.org/■Instagram https://www.instagram.com/shoko.kanazawa/日経BP総合研究所
元のページ ../index.html#20