かつて日本は、天然資源に乏しく、原油などの燃料資源や工業原料を海外から輸入し、それを加工・製品化して輸出する加工貿易を基盤として経済発展を遂げましたが、時代の変遷とともに過去のものとなりつつあります。「失われた20年」と呼ばれる長期的な経済停滞の中で、デフレや円高が進行しました。その結果、企業は生産拠点を海外に移し、国内の産業空洞化が進みました。これに伴い、貿易収支は赤字化し、国内の雇用や設備投資の減少、技術の流出、製造業の縮小といった負の連鎖が生まれ、生産力の低下が深刻化しました。近年、地政学的リスクの高まりや海外での人件費高騰、さらに円安の影響を背景に、企業は生産拠点を再び日本に戻しつつあります。この国内回帰の動きは再び「貿易立国」として復活する可能性が広がっています。企業の現状維持は衰退であり、製造業が持続的に成長するためには、現状に安住せず、未来に向けた挑戦を続けることが不可欠です。新たな分野への進出、新商品の開発、販路開拓、輸出の拡大、さらにはM&Aなどの施策を通じて、生産性を向上させイノベーションを起こすことで付加価値を高め、国際競争力を強化していくことが必要です。こうした企業の取り組みは、地域経済の発展にも大きく寄与します。企業の成長がもたらす税収増や雇用拡大は、地域社会に活力をもたらし、持続可能な発展を促します。製造業は環境への責任も担っています。脱炭素社会を目指す中で、生産活動においてエネルギー効率を高め、環境負荷を低減する努力が求められています。地場産業の生産拡大・脱炭素化や半導体関連企業など先端産業の誘致のための環境に配慮した脱炭素型産業集積地は、持続可能な地域づくりに貢献します。持続可能で力強い製造業の復活は、地域経済に欠かせない要素であり、企業と地域が一体となって、新たな時代に向けた発展を目指していくことが「貿易立国」の復活にもつながることになるでしょう。15コラム松山商工会議所製造業部会部会長チェンジリレーコラム第19回「地域に貢献する製造業」村田 裕司大変革の時代に チャンスを掴む
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